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What is “Richlite”?

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img_3085近年、ギターに使われる木材が枯渇してきて、どんどん代用材に置き換えられるようになってきました。特に従来から高級機種に使われてきたエボニー(黒檀)の供給は深刻だったようで、GibsonやMartinなどの老舗有名ブランドでも人工素材が使われるようになってきています。

「リッチライト」と呼ばれるこの人工素材、実際に使ってみると悪くありません。たまたま自分のメイン・ギターとも言える2本がリッチライト指板ということになったのですが、見た目や感触にはちょっとした違いがあります。

まず、カナダのGodin(ゴダン)というメーカーのエレクトリック・ナイロン弦ギター、Godin Multiac Grand Concert Duet Ambianceですが、割とツルツルして光沢のある仕上げとなっています。

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一方、Gibson Memphis ES-275 Figured Montreux Burstの指板は、少しマットな感じでサラサラしています。

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そして、両方並べてみたところが下の画像です。ナイロン弦が指板に映り込んでいるあたりから、表面のツルツル加減がうかがえるかもしれません。

音質的にはまったく問題ないと思います。実は昔、エボニー指板のギターを何本か所有していたことがあるのですが、正直なところあまり印象は良くありませんでした。

特にBladeというブランドのストラト・タイプに関しては、新品で買ったエボニー指板の高級機種よりも、中古で買ったローズウッド指板のもっと安い価格帯のギターの方が全然良かったので、もうこれは高級材のエボニー指板だからいいとかそういう問題ではないのだな、と痛感しました。

おそらくこれはギターを「楽器」としてデザインするという視点が欠けていることによるものではないかと思っています。そして、それは日本のギター・メーカーがFenderやGibsonの「形」をコピーできても「音」を再現できない大きな理由ではないかとも考えられるのです。

そもそもFenderは歴史的にみて、基本的に指板材としてエボニーを採用していません。メイプル・ネックに別の指板材を貼る場合は、同じメイプルを使うMaple-on-maple(いわゆる「貼りメイプル」)を除けば、ローズウッドが選択されています。ですから、Fender Stratocasterをベースにしたギターを作るのであれば、指板材としてはローズウッドでちょうど良いバランスだったわけです。

ところがBladeは、基本的にはFenderのコピーモデルの延長線上にあるにもかかわらず、上級機種にはローズウッドよりも値の張るエボニーを奢るというGibsonの流儀を適用してしまいました。BladeはスイスのGary Levinsonが開発したさまざまなアイディアを具現化した新興ブランド(と言っても1980年代の話ですが)で、製造は日本のメーカー(Tune)が行なっていました。

Gibsonのギターは基本的にマホガニーをネック材としています。マホガニーはメイプルよりも柔らかい木材で、その性質は音質の差にも表れています。柔らかいマホガニーのネックに指板材としてより密で硬質なローズウッドやエボニーを貼る場合、ローズウッドとエボニーの差はちょっとしたキャラクターの違いで済むかもしれませんが、ただでさえマホガニーよりも硬いメイプルをネック材としているFender系のギターには、ローズウッドよりさらに硬質なエボニーの組み合わせは「やりすぎ」でしかなかったのでしょう。

Bladeのギターは他にも所有したことがあり、その中にはFender Telecaster Thinlineをベースにしたモデルで、やはりエボニー指板を採用したギターもありました。しかしこれもやはり気に入らず、短期間で手放してしまいました。

要するに、この木材の組み合わせで出てくる音がいいか悪いかということではなく、価格帯に合わせた材の選択をしてしまっているという感じがするわけです。この傾向は日本のメーカーに共通しているのではないでしょうか。

ちなみに、Godinを買うときにもGibsonを買うときにも、それぞれ近いグレードもしくは同機種でローズウッド指板のモデルとの弾き比べをしていますが、どっちもアリだと思いましたし、それぞれメーカーが狙っている音の範疇に収まっていて、材によってキャラクターの違いを出そうとしているようには感じませんでした。

要するに、どちらも極めて自然な「本物らしい」音がしているという印象です。

ただ、長年使い込むうちにどうなっていくのかという点では、リッチライト指板のギターはまだデータが少ないので、そこは不安材料と言えるかもしれません。しかし、リッチライト指板を使わないとおそらくもっと価格が跳ね上がるでしょうし、何よりも現在使えるエボニー材の品質自体がかつてのような安定したものではないという問題があります。

とりあえず個人的には人工素材であることはまったく気になりません。購入を迷っている方は、まず先入観を持たずにいろいろ弾いてみることをお勧めします。